星野リゾートが展開するホテルブランド「OMO by 星野リゾート」(以下、OMO〈おも〉)は、『テンションあがる「街ナカ」ホテル』をブランドコンセプトに都市に立地する観光ホテルで、リゾートホテル・旅館の運営経験を活かし2018年4月旭川、同年5月東京大塚と、2施設を開業して以降、現在では18施設が運営されている。都市に宿泊主体やビジネス、シティなど多様なホテルがひしめくなかで、圧倒的な差別化を図るために、快適で機能的なデザイン性ある客室や都市観光の拠点となるOMOベースの設置のほか、「地域魅力を取り込んだユニークな体験」が宿泊者への価値として提供されている。本号では「OMO」ブランドの紹介とともに、ユニークで健康的な体験を「OMO7高知 by 星野リゾート」(以下、OMO7高知)を通じて見ていきたい。
『Wellness Business』通巻2号(2026年2月25日発行)連載「星野リゾートのサブブランド戦略とウェルネスプログラム研究」記事を転載
OMOブランドの戦略
これまで本連載で、星野リゾートが「星のや」「リゾナーレ」「界」「OMO」「BEB」「LUCY」の6つのサブブラドを持ち、各ブランドが競合施設とのコモディティ化を脱却するために、宿泊事業のなかでも独自の運営力と魅力創造力を武器にしていることを紹介してきた。その内容は、地域特有の文化を取り入れ、滞在の魅力となるように、スタッフ自ら考え提供していることが特徴だ。なかでもウェルネスのテーマはサービスの中でも重要なキーワードとして紹介してきた。
OMOは、都市観光に星野リゾートらしい、ユニークな価値を入れたサブブランドだ。18施設のOMOには数字・アイコンがあるが、これはサービスの幅やタイプを示すもの。旅の目的や過ごし方に合わせて選択できるよう、図表1のようにホテルのタイプを表している。またブランドの4つの仕掛けで、図表2に示しているように、都市の好立地で、居心地よいデザインによる客室で、街ナカの情報や楽しみ方を紹介する旅の基点となるOMOベースがあることが特徴だ。
【図表1】「OMO by 星野リゾート」 数字・アイコンが示すホテルタイプ
OMO1
| ホテル形態 | カプセルホテル |
|---|---|
| コンセプト/旅の目的 | ミニマルな旅の拠点 |
| 主な付加機能・サービス | ローカルガイドアクティビティ ご近所MAP&OMOベース |
| 施設名 by 星野リゾート |
OMO3
| ホテル形態 | ベーシックホテル |
|---|---|
| コンセプト/旅の目的 | 気軽な旅にうれしい |
| 主な付加機能・サービス | グラブ&ゴーの朝食 ローカルガイドアクティビティ ご近所MAP&OMOベース |
| 施設名 by 星野リゾート | OMO3京都東寺(2021年4月15日開業・120室) OMO3東京赤坂(2022年2月25日開業・140室) OMO3浅草(2023年7月31日開業・98室) |
OMO5
| ホテル形態 | ブティックホテル |
|---|---|
| コンセプト/旅の目的 | 街の魅力とデザインを楽しむ |
| 主な付加機能・サービス | グラブ&ゴーの朝食 |
| 施設名 by 星野リゾート | OMO5東京大塚(2018年5月9日開業・125室) OMO5京都三条(2021年4月15日開業・122室) OMO5沖縄那覇(2021年11月1日開業・190室) OMO5京都祇園(2021年11月5日開業・36室) OMO5小樽(2022年1月7日開業・92室) OMO5金沢片町(2022年5月20日開業・101室) OMO5熊本(2023年4月25日開業・160室) OMO5東京五反田(2024年4月11日開業・188室) OMO5函館(2024年7月6日開業・245室) OMO5横浜馬車道(2026年1月15日開業・175室) |
OMO7
| ホテル形態 | フルサービスホテル |
|---|---|
| コンセプト/旅の目的 | 都市のランドマーク |
| 主な付加機能・サービス | カフェ/レストラン/バンケット ビュッフェスタイルの朝食 ローカルガイドアクティビティ ご近所MAP&OMOベース |
| 施設名 by 星野リゾート | OMO7旭川(2018年4月28日開業・237室) OMO7大阪(2022年4月22日開業・436室) OMO7高知(2024年6月13日開業・133室) OMO7横浜(2026年4月21日開業・276室) |
エアポートホテル
| ホテル形態 | 空港近接型ホテル |
|---|---|
| コンセプト/旅の目的 | 空チカ、ファンタイム |
| 主な付加機能・サービス | スパ&フィットネス エアポートアクセス エクスプレス・フル・ビュッフェ ご近所MAP&OMOベース |
| 施設名 by 星野リゾート | OMO関西空港(2023年3月20日開業・700室) |
なかでもOMOベースの壁面に大きく掲示される「ご近所マップ」は、ホテルから500歩圏内(時間距離10分程度)の近所の飲食店や観光スポットを地図にプロットし、宿泊者が知らない地域の情報を紹介している。さらにそれら情報は実際に街を歩き探索するアクティビティ「Go-KINJO(ごーきんじょ)」となり、スタッフが「OMOレンジャー」となって案内するプログラムとして定着している。

高知に限らずすべてのOMOにマップがあり、都市観光の案内を表示している
OMOの1施設目の旭川、2施設目の東京大塚に登場したOMOレンジャーやGo-KINJOは、当時、ホテル業界では異例のサービスで注目を集めた。ご近所マップのような近隣マップは、今では多くの他社ホテルが設置するようになっているが、街歩きをスタッフが案内することまでは他ホテルは行えない。星野佳路代表は、様々なサービスが模倣されていくことへの対策は、スタッフがトレードオフを伴う活動で新しい魅力をつくり出すこと、それが星野リゾートの運営の特徴になっていると常に説明してきている。星野リゾートのスタッフはマルチタスクで現場業務に当たり、その一方で、アクティビティや魅力の設計に取り組み、ユニークな体験を創出している。
本稿では地域特性を取り入れている「OMO7高知」を見ていきたい。
「OMO7高知 by 星野リゾート」が毎日開催するよさこい踊り体験
高知市中心地から徒歩15分強に立つ「OMO7高知 by 星野リゾート」は、192室でシングル中心であったホテルを改修し、133室・定員約340名へとリノベーションし、リブランドし開業した。大浴場・サウナも新たに整備し、ダイニングもブュッフェスタイルに新装、高知の文化を365 日体感させる「こじゃんと楽宴 さぁ、夜さ来い!」をコンセプトに設定した。
高知といえば「よさこい踊り」が有名だが、市内の「よさこい祭り」は毎年8月の開催で、それ以外の時期に、よさこい踊りを実際にリアルに見ることのできる場所は少なかった。OMO7高知では、よさこい踊りが毎日体感できるホテルであることを考えた。
また、高知には独自の宴会文化「おきゃく」がある。これは大皿にごちそうを盛りつけた皿鉢(さわち)料理を食しながら、天狗やおかめの形をした盃で、飲み切るまで飲み続ける酒の席でのゲーム「可杯(べくはい)」で盛り上がり、楽しむもの。高知特有の宴会文化を、宿泊体験に据えた。
高知の「よさこい踊り」「おきゃく」という二つの文化を体験しながら、「こじゃんと(土佐弁で「たくさん・めいっぱい」の意味)、旅を楽しんでもらいたい」ということから、「こじゃんと楽宴 さぁ、夜さ来い!」のコンセプトとなっている。これらを決めていくために、旧ホテル時代から働いてきたスタッフや、地元で新たに採用したスタッフ、星野リゾートの各施設で魅力開発の経験があるスタッフが集結し相互議論を深めて、滞在中の魅力を構築していった。

「運営効率」「体験価値」の両立を狙うよさこい踊り365日開催が生む宿泊理由の創出
OMOは図表2にもある「ローカルリズムナイト」とするイベントに全施設が力を入れているが、よさこい踊りはこれに位置付け、毎晩21時によさこい踊りショーが開催されている。
【図表2】「OMO by 星野リゾート」のテンションがあがる4つの仕掛け
| 仕掛け | 内容 |
|---|---|
| 外さない楽しみ方をご提案 | 街歩きや穴場グルメ、人気観光スポットの攻略法など、ご近所を知り尽くしたスタッフが街の楽しみ方を提案 |
| 都市滞在にぴったりな客室 | 街を感じるデザインや使いやすい収納、グループ利用にも対応。靴を脱いで寛げる設え |
| 色々使えるOMOベース | カフェ、ご近所マップなど、旅に便利な機能を集約したパブリックスペース。客室のように寛げる、滞在の第二の拠点。 |
| ローカルリズムナイト | 心地よい音楽とドリンクで過ごす夜時間。ひとりでも気軽に参加できるイベント |
場所は、レセプションに接するOMOベースの中央に、リブランド時に新規に設置された大階段が舞台となり、音、光、映像など演舞を盛り立てる設備も導入した。参加する宿泊者は、よさこい踊りの鳴子を持ち、踊子の熱演に一緒にリズムをとり参加している。30分間のショーが終わると心も身体も満たされる感覚を得られるイベントだ。
会場となる大階段では、17時から毎日「土佐のおきゃく講座」も開催されており、宿泊者はコンセプトを理解したうえで館内で過ごすことができる。

このほか、ご近所アクティビティとして、高知の食文化を知る、地元スーパー散策の「土佐のスーパーマーケットツアー」、高知市の朝市「日本一の日曜市ツアー」「グルメな木曜市ツアー」など、OMOレンジャーが案内する健康的な街歩きも人気のコンテンツになっている。

OMO7高知の総支配人立川久美子氏は「高知は全国的に見れば、観光地としての認知度は決して高くない。日帰り需要も多く、『なぜ泊まるのか』という理由づくりが不可欠だった。そこで打ち出したのが、『365日毎晩、よさこいを踊る』という明快なメッセージだった。演者はすべてホテルスタッフ。宿泊者参加型のプログラムは、星野リゾートの運営する青森屋で実践されているが、その経験を踏まえ、高知仕様に再構築している。本物の文化として届けるため、振付・楽曲・衣装には地元の第一人者の方々に支援いただいている」と話す。
「よさこい踊りを、スタッフが本当にできるのか、という不安もあったが、OMO7高知を象徴する体験にしていこうとスタッフが一体感を持って取り組んでくれた。踊りもどんどん上達している」と話す。
現在の宿泊者は、首都圏・関西圏を中心とした観光客が大半を占め、家族連れや三世代が館内で過ごす時間を宿泊の目的化とすることが多いという。開業から2年余りを経過し、稼働約80~90%、客室平均単価も約25000~30000円と順調に推移していることを見ると、コンセプトや、よさこい踊りショーなどの魅力が、収益上にも成果が表れていることが読み取れる。
今に満足せず、よさこい踊りの演出に磨きをかけ、アクティビティやサービスのさらなる進化を進めて行くという。
DATA
OMO7高知by星野リゾート 施設概要
所在地:高知県高知市九反田9-15
開業日:2024年6月13日
客室数:133室(全8タイプ)
施設:OMOベース(OMOカフェ&バル、ご近所マップ、フリースペース、ロッ カー、ショップ、OMOダイニング)ランドリー、大浴場、宴会場