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—投資先「株式会社nobitel」「ウェルネス・コミュニケーションズ株式会社」の支援実践を通じて

株式会社ロングリーチグループは、日本を中心にアジア地域においてプライベートエクイティ投資を行う独立系投資会社として、2003年に設立された。投資先としてフォーカスしている産業分野は、1つ目が製造業を含む産業テクノロジー分野、2つ目がB to Bのビジネスサービス分野、3つ目が専門小売、外食、食品、パーソナルケア等の消費財・サービス関連分野で、コンシューマー系のサービスやプロダクトに特に注目している。また近年では上記3分野で横断するヘルスケア関連企業に戦略的な投資を実施しており、投資先に、ストレッチ専門店「Dr. stretch」を展開する株式会社nobitel(以下、nobitel)、健康管理クラウド事業、健診ソリューション事業をB to B to Eで提供するウェルネス・コミュニケーションズ株式会社があり、ロングリーチグループによる投資後の戦略支援で、両社とも確実な成長を遂げている。この2社への投資支援にあたる津田敬太郎氏に、同社の投資フィルター、また2社の投資戦略に通じる、ウェルネス市場での戦い方について訊いた。(以下、談)

『Wellness Business』創刊1号(2025年11月25日発刊号)掲載記事を転載

ウェルネスが拓く、新しい社会の形

近年、健康意識の高まりを背景に、フィットネスやヘルスケアといった既存概念にとどまらない「ウェルネス市場」が世界的に急成長を遂げている。どこまでをウェルネス市場と捉えるかが不明瞭だが、ある市場レポートによるとその市場規模は、現在、約45兆円と言われているが、2030年には90兆円に達するという予測もされており、国内外の投資家や事業者にとって注目の分野となっている。

「ウェルネスビジネス」誌創刊にあたり、ウェルネス市場の現状と、成長のカギとなるビジネスモデル、そして今後の展望について話をしていきたい。

かつて「健康」といえば、医療や治療といった「マイナスをゼロに戻す」ヘルスケア領域が中心だった。しかし、今求められているのは「心身ともに健康な状態を高めていく」ウェルネスや、「自己実現」や「生活の質の向上」までも包含する「ウェルビーイングの実現」へと進展していると見ている。

この「健康」の概念の変化に呼応し、従来、運動やフィットネスを中心に据えていた多くの企業も、ウェルネス領域へと舵を切っている。その背景には、事業会社や不動産会社、地方公共団体など、様々なプレイヤーが「健康」を起点とした新規ビジネスを模索しているという現状がある。そうした企業の成長や事業拡大への支援の必要性が高まっている。

身体的・精神的な健康に関わる産業は、治療を中心とする「ヘルスケア」から、フィットネスを軸に健康の維持・増進を図る「ウェルネス」、そして充実感や癒しを重視する「ウェルビーイング」まで、多岐にわたって広がっている。ロングリーチグループでは、このうちウェルネス領域を中心に、ヘルスケアにも一部またがる分野への投資にフォーカスしている。

  • ヘルスケア:医療を含む「治す」領域。レギュレーションが厳しく、投資先としては専門性が求められる
  • ウェルネス:予防や健康増進を中心に据えた「積極的な健康づくり」
  • ウェルビーイング:自己実現やエンターテインメントを含めた「豊かな人生の実現」

特に注目しているのは、B to Cだけでなく、B to Bモデル、B to B to Cモデルで、そのビジネスが社会全体へ、どのようなウェルネスへの影響を及ぼすことができるかを見ている。

具体的な投資事例をもとに、話を進めていきたい。

マネタイズを実践した投資支援先、
株式会社nobitel――「Dr. stretch」、「WECLE」

ウェルネスに取り組む事業における最大の課題の一つが「マネタイズの難しさ」だ。例えば、健康増進のために歩く、食生活を改善する、といった行動自体は本来お金をかけずとも可能である。ただ、それが実行できる人はごく一部に過ぎず、そこに「継続支援」や「楽しく取り組める仕組み」を提供できるサービスが求められていると見ている。

この観点から成功している事業が、ストレッチ専門店「Dr. stretch」や、マシンピラティスを提供する「WECLE(ウィークル)」などの店舗サービスを展開している株式会社nobitelのビジネスだ。

「Dr. stretch」はプロトレーナーによるストレッチを受けられるという“受け身型”のサービスにより、利用者の支持を受け、利用数も継続率も高まっている、今まで日本になかったコンディショニング領域のサービスだ。投資後は、同社とともに成長の方向性を描き、それを実現するための経営戦略を一緒に進めている。常に改革を進め、近年では利用時間の分散化を狙い料金のダイナミックプライシングを導入したり、継続性向上のために会員制を採用し、同時に利便性の向上を図り、同社の収益構造の最適化を進めている。順調に店舗数も増加し企業の価値向上を実現している。

同社のもう1つの業態、「WECLE」は、ピラティスマシンを利用し1回30分間、マシンを順番に使う“サーキット型ピラティス”スタジオで、「予約不要」「着替え不要」「通い放題」のシステムから、低コストで高効率が可能となっている。マシンピラティスは、本格的なピラティスと比べて未経験者でも利用しやすく、また、年齢や体力に関わらず取り組める点が評価されている。

「WECLE」は、これから株式会社nobitelの新事業モデルとして拡大していきたい。

なお、Dr. stretchの店舗数は、投資時に約180店舗だった国内拠点は、投資後2年間で現在235店舗まで拡大することができた。これから海外への拡大を進めていく。シンガポールや台湾、マレーシア、UAEなどに既に25店舗展開しているが、今年中にインドネシアでの開店が決定している他、オランダ、フィリピン、サウジアラビアで各国のパートナーと具体的な交渉が進んでおり、さらに韓国、インド、ベトナムなど新規展開も検討中である。この2年間で海外におけるビジネスモデルがある程度確立された。ウェルネスの分野は海外でも

求められており、「どこでも通用する」という手応えを得ている。

B to B領域における健康管理プラットフォームの重要性

B to B領域では、従業員の健康管理を担う企業向けにサービスを行うウェルネス・コミュニケーションズ株式会社に投資し成長支援している。同社は、企業の人事部門が全従業員の健康データを一元管理できるクラウド型のプラットフォームを提供しており、健康診断のデータ管理や分析、さらには他社サービスと連携し多様なサービス提供を可能にしている。

このプラットフォームの存在により、これまで企業が単独で、従業員の健康を管理することはコスト面や人材面で難しかった課題が、一気に解決し、現実的に実施できることになった。今後、このプラットフォームを軸にしたB to Bビジネスの広がりは、ウェルネス市場の成長とともに重要性を増していき、B to B to Eビジネスへの広がりを実現すると期待し、導いていきたい。

そのような期待も込めて、ウェルネス・コミュニケーションズ株式会社を、2025年6月23日に東京証券取引所グロース市場に新規上場した。投資先上場は、一般的に投資家には出口戦略の一環と見られるが、ロングリーチは2023年の同社への投資実行時から、経営基盤整備と成長戦略実行において、上場を戦略の1つとして位置づけてきた。上場を通じて、コーポレート・ガバナンスの透明性と企業としての信頼性を一層強化し、システム投資や連携事業のM&Aを推進することで、より企業価値を高めていける。ロングリーチは、上場を新たな成長ステージの出発点と捉え、戦略的な支援を続けるとともに、従業員の健康と企業の生産性の向上が経済活動を支えるといった社会的使命の実現に貢献していきたい。

コミュニティとエコシステムの形成へ
今後の展望と投資戦略

ウェルネスビジネスのもう一つのカギは、「コミュニティ」と「エコシステム」だと考えている。単一の企業やサービスだけで完結するのではなく、まちづくりや商業施設、宿泊施設など、異業種が連携することで、利用者にとって利便性と価値の高いサービスを創出する流れが生まれていくと思われる。

特にホテル業界では、単なる宿泊ではなく、リトリートやウェルネス体験を目的とした滞在型需要が高まりつつある。この流れに合わせて、フィットネスや栄養指導、メンタルケア、地域コミュニティなど、多様なサービスが融合した複合型のビジネスモデルがこれから注目されていくと考えている。

ウェルネス市場における今後のカギは「継続性」と「可視化」。テクノロジーの進化により、健康状態や運動習慣、生活リズムなどをデータとして可視化することで、利用者のモチベーションを喚起し、行動変容へと繋げることが可能となっている。そこにゲーミフィケーションやエンターテインメント要素が加わることで、さらに継続しやすくなる。

今後の同分野での投資戦略としては、医療など高レギュレーション分野への参入は避けつつも、ウェルネスの中心軸を保ちながら、B to CとB to Bの両面で、事例にあげた2社のプラットフォームも活用しつつ、周辺事業への投資を加速し、「健康」というテーマで社会に貢献できる価値創出を目指していきたい。(談)

Interview

津田敬太郎氏

株式会社ロングリーチグループ 
パートナー

東京オフィスを拠点に、コンシューマー、製造業・産業テクノロジー、ビジネスサービス関連分野など幅広い分野での投資活動全般に従事。これまでにFCLコンポーネント(旧 富士通コンポーネント)、ジャパンシステム、ウェルネス・コミュニケーションズ、Blueship、nobitel、ライトワークス等への投資案件を担当。
日本プライベートエクイティー協会理事。
ロングリーチグループ参画前は、ユニゾン・キャピタルのディレクターとしてソーシングから企業価値向上、エグジットまで様々な投資案件に従事。ユニゾン参画前は、10年間に渡りニューヨークを拠点に伊藤忠商事の北米本社である伊藤忠インターナショナルのディレクター等を務め、北米市場でバイアウトを行う200億円規模の社内プライベートエクイティ投資ユニットPrincipal Investments Groupの創設及び運営に従事。渡米前は米証券会社キャンター・フィッツジェラルド東京支店にて通貨オプション取引に従事。
早稲田大学社会科学部卒業、イリノイ大学アーバナ・シャンペーン本校MBA修了

津田敬太郎氏

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