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ウェルネスの4本柱が生み出す、新しいライフエコシステム

マッキンゼー・アンド・カンパニーの調査によると、世界の消費者の79%がウェルネスを「重要」、42%が「最優先事項」と考えています。私はこの数字を、世界の人々が、「よりよく生きる」ことを再定義し始めた証だと捉えています。

ウェルネスの未来は、ホリスティックでありながらテクノロジーを融合し、人を中心に据えたものです。睡眠・栄養・運動・マインドフルネスの4本柱はもはや孤立した要素ではなく、活力ある身体、感情の安定、精神的回復力、そしてコミュニティを支えるダイナミックなエコシステムの構成要素です。

この4要素は、非感染性疾患(心臓病、脳卒中、肺疾患、がん、2型糖尿病など)によって毎年4000万人が命を落としている現状に、明るい兆しをもたらします。

そして今、テクノロジーの急速な発展がその実践を後押ししています。ウェアラブルデバイスやAI分析による健康データの活用が、個人に合わせたカスタマイズを可能にし、睡眠・栄養・運動・マインドフルネスが連動する“体験主導型のウェルビーイング”が世界中で進化しています。

世界が注目する「睡眠」のイノベーション

いま最も注目すべき分野の一つが「睡眠」です。

世界保健機関(WHO)によると成人の32.8%が十分な睡眠を取れていません。Statistaの分析では、世界の「睡眠経済」は2019年の4,320億米ドルから2024年には5,850億米ドルに拡大すると予測されています。

世界中の人々が週平均で3夜分の回復的な睡眠を失っているとされ、スパトリートメントや睡眠リトリート、ガイド付き瞑想、不眠症向け認知行動療法、スマートマットレス、ウェアラブル機器など、次世代の睡眠テクノロジーが急成長しています。ホテル業界では、サーカディアン照明、空気清浄、睡眠コンシェルジュなどのプログラムが導入され、リカバリーやリトリートを価値とした新たなホスピタリティ体験が広がっています。

特筆すべきは、これはベビーブーマーやX世代に限った話ではなく、Z世代やミレニアル世代にも、睡眠に関する不安を抱え、不適切な睡眠習慣が見られていることです。

(睡眠市場の推移および世代別睡眠不安率/出典:Statista・GWI Sleep Initiative)

「食」におけるウェルネス市場も急拡大へ

もう一つの注目領域は栄養です。

不健康な食生活(過食・加工食品・糖分や塩分の過剰摂取)が原因で年間約1,100万人が命を落としており、これは飢餓や栄養失調による年間推定死亡者数約900万人を上回ります。

マッキンゼー・アンド・カンパニーの調査によると、「栄養管理がより個別化・予防的になっている」と、部門パートナーのエリック・ファラルドー氏は指摘します。

また、機能性栄養製品に求められる主な効果として、エネルギー補給、腸内環境改善、免疫力向上が挙げられ、消費者の52%が過去1年間にこうした製品を購入しています。

生鮮食品、発酵食品、プロテインパウダー、機能性スナック、即飲飲料はすべて、急成長する市場で強い購買意欲が見られます。

2025年の市場規模は、栄養補助食品が1,704億米ドル、機能性食品が1,836億米ドル、機能性飲料が1,683億2,000万米ドルと推定されています。

(機能性食品・飲料市場予測/出典:Mc Kinsey & PwC Global Consumer Survey)

一方で、プライスウォーターハウスクーパー社の調査によると、依然として多くの消費者は価格を栄養価より優先しており、ウェルネスが持続可能であるためには「アクセスの平等性」も重要です。

「運動」は、スポーツやフィットネスを超えてウェルネスへ

運動は今やスポーツやフィットネスを超えて、包括的で長寿志向のウェルネス革命の中心にあります。

2024年のWHOの報告では、成人の31%(約18億人)が推奨される身体活動レベルを満たしておらず、2030年には35%に上昇すると予測されています。

今、ウェルネスシーンでも、ヨガ、ピラティス、可動域を高めるクラスなどが人気を集め、AI搭載ウェアラブルがリアルタイムでパーソナライズされた指導を提供しています。

運動とライフスタイルが共存する文化的シフトが起こり、アクティブな層と「スポーツカジュアル」な美学を追求する双方を惹きつけています。アスレジャー市場は2025年に4,727億1,000万米ドルと評価され、2034年までに年平均成長率(CAGR)9.50%で1兆698億4,000万米ドルに達すると予測されています。フィットネスシューズ市場では2025年の1,440億7,000万米ドルから2034年には2,045億6,000万米ドルへ成長し、年平均成長率(CAGR)3.97%を示しています。2024年時点でアジア太平洋地域が最大のシェア(36%)を占め、日本ではミズノが主要ブランドとして位置づけられています。

(アスレジャーおよびアスレチックフットウェア市場成長予測/出典:Statista2024)

「マインドフルネス」が、日常のウェルネス習慣に

世界保健機関(WHO)によると、うつ病に苦しむ人は2億8000万人(世界人口の3.8%)に上り、瞑想やアプリなどの非薬物療法への需要が急増しています。マインドフルネスは現在、デジタルアプリ、職場プログラム、日常の習慣という形で主流となっています。別の例として、ウェルネス・リトリート市場は2022年に1,805億米ドルと推定され、2032年までに3,639億米ドル(年平均成長率7.4%)に達すると予測されています。

日本が持つ“静の力”が、世界ウェルネスの新たな原動力に

日本のウェルネス市場規模は、グローバル・ウェルネス研究所の統計によれば世界第4位、2,400億ドル規模で、アジア太平洋では第2位に位置します。

自然派・アンチエイジング・ミニマリスト志向の美容市場は617億ドルを占め(Pulse Marketing)、またウェルネスツーリズム市場も2024年には593億ドルに達する見込みです(IMARC Group)。

温泉、禅、森林浴、漢方医学、指圧、旅館文化など、日本の「静けさの美学」は世界のウェルネス観光客にとってかけがえのない価値です。

ただ、課題もあります。

日本では、ホスピタリティやフィットネス分野で英語対応人材が限られており、国際的な受け入れ体制の強化が必要です。AI翻訳技術の活用は、日本のような技術先進国にとって最適な解決策になるでしょう。私はWorld Wellness Weekendの活動を通じて、日本各地の自治体と協働し、東川町・静岡市・大和市・小田原市・名古屋市・広島市・唐津市・鹿児島市などで、学校・図書館・公園を活用した地域ウェルネスプログラムを視察しました。ヨガや瞑想、マインドフルネスが街の日常に溶け込み、世代を超えて人をつなぐ光景に、私は深い希望を感じます。

『Wellness Business』誌は、日本のウェルネス産業を世界と結ぶ架け橋になると信じています。日本はアジアで最も活動的な国、東京は世界で最もアクティブな都市のひとつです。

これからの10年、日本が「WellnessForAll」の理念を体現し、47都道府県でウェルビーイングの連鎖を生み出していくことを心から願っています。

ウェルネスとは、人と人、自然と社会が調和し、共に最高の自分へと進化していく力なのです。(談)

Interview

Jean-Guyde Gabriac
(ジャンギー・ガブリアック)氏

World Wellness Weekend創設者

フランス出身。国連SDGsの目標3「すべての人に健康と福祉を」を掲げ、世界187カ国・11,000会場で開催されるウェルネス啓発イベント「World Wellness Weekend(国際スポーツ&ウェルネスウィークエンド)」を創設。スパ、フィットネス、ツーリズム、ウェルネス都市開発など多分野でウェルネス文化の普及に取り組む。各国の首長や国際機関と連携し、地域社会に根ざしたホリスティックなウェルビーイングの推進に尽力している。
World Wellness Weekend(国際スポーツ&ウェルネスウィークエンド)創始者
International Non-Profit Association World Wellness Weekend(国際非営利団体国際ウェルネスウィークエンド)会長
IAMA:International Massage Association(国際マッサージ協会)2025殿堂入り
APSWC:Asia Pacific Spa & Wellness Asia Pacific Spa Wellness Coalitionアジア太平洋スパ&ウェルネスアジア太平洋スパウェルネス連合
2025年ウェルネスインフルエンサー・オブ・ザ・イヤー