最新ニュース

『Wellness Business』通巻2号(2026年2月25日発行)掲載記事を転載

世界22カ国で27のラグジュアリーリゾート&ホテルを展開するシックスセンシズ。1995年の創業以来、ウェルネスとサステナビリティを融合させた先駆的なアプローチは「ウェルネスのパイオニア」として世界的に注目を集めている。同社グローバル・ウェルネス部門幹部のマーク・サンズ氏に、ウェルネス業界の最新トレンドと今後の展望について話を訊いた。

――まず、ウェルネス業界でのキャリアについて教えてください。

父の後を継いで歯科医師の道も考えましたが、最終的にレジャーマネジメントを専攻し、イギリスのウェントワース・クラブでキャリアをスタートしました。

タイミングに恵まれ、当時同クラブはゴルフコースに加えてテニス&ヘルスクラブの建設を進めていました。そのため、ウェルネス、スパ、フィットネス、テニス、ゴルフ、そしてソーシャルコミュニティの形成に至るまで、幅広い運営管理を学ぶ機会に恵まれました。素晴らしいスタッフやメンバーの方々に囲まれて働けたことは、私のキャリアの基盤となっています。

その後、いくつかのホテルスパやクラブで経験を積みましたが、次第に「1日でデトックス」「週末で変身できる」といった表面的なパッケージを販売することへの違和感が募っていきました。私が本当にやりたかったのは、人々の生活の質を向上させる、意味のあるアドバイスやサポートを提供することでした。

そこで自分の目的を見つめ直そうと、インドに渡り、アーユルヴェーダやヨガ、インド哲学のヴェーダーンタを学びました。ヒマラヤ山麓にあるアナンダでは6年以上を過ごし、自らも成長しながらチームの育成を支援し、ゲストの人生を変えるような体験を提供することができました。

その後シックスセンシズにジョインし、ゲストとスタッフがより健康で幸せな生活を送れるよう導ける可能性を確信しました。シックスセンシズの強みは、ウェルネスとサステナビリティの実践をシンプルで分かりやすく、楽しい形でゲストに届けることにあると実感しています。

ウェルネスとサステナビリティを融合させたシックスセンシズの先進的なアプローチは、「ウェルネスのパイオニア」として世界的にベンチマークされている

――シックスセンシズにおける、ウェルネス哲学とは?

私たちのビジョンの中心にあるのは、ゲストが自分自身、他者、そしてまわりの世界と再びつながるための知識とサポートを提供することです。この原則はシックスセンシズの創業以来、常に中心にあり続けています。

私たちの哲学の核心には、「サイエンス、ウェルネス、スピリチュアリティが自然に共存できる」という信念があります。症状に対処するのではなく根本原因に焦点を当て、標準化されたプロトコルではなく個人のバイオリズムや好みに合わせてパーソナライズしています。滞在開始時のウェルネススクリーニングでは、手足をプレートに置くだけで、30種類のバイオマーカーが測定でき、ストレス耐性、血圧、エネルギーレベル、認知機能、休息状態などの主要な生理学的指標が確認できます。目的別プログラムには、デトックス、睡眠、フィットネス、ヨガ、体重管理、アーユルヴェーダによる若返り、女性のウェルネス、健康長寿などがあります。「シンプルで楽しいこと」を大切に、ゲストが押しつけがましさを感じることがないよう、統合的なプログラムを設計しています。

サステナビリティも欠かせない要素です。サステナビリティ・ファンドを通じて、各シックスセンシズの収益の0.5%が地域の野生生物保護、生態系の回復、コミュニティ支援に充てられています。例えばフィジーでは絶滅危惧種のイグアナの保護活動を行い、また全ホテルでプラスチック削減に取り組むガイドラインを策定するなど、訪れた場所に良い影響を残す旅の実現に力を注いでいます。

――世界では、ウェルネスはどのように発展していますか?

ウェルネスのトレンドは文化やライフスタイル、生活習慣によって世界各地で異なります。

孤島や遠隔地のリゾートでは、自然とのつながりを重視した没入型のリトリートスタイルのウェルネスに焦点を当て、一方、都市にある拠点では、安らぎのためのウェルネスで、バランスの回復とストレス管理をサポートします。
2024年にオープンしたシックスセンシズ京都は、都市型の「自然派ラグジュアリーリゾート」という新しいコンセプトで、古代日本の儀式と最先端のウェルネスイノベーションを融合させ、パーソナライズされたウェルネスプログラムやバイオフィードバックを含むリカバリー体験を提供しています。

2026年には、ロンドン、ミラノ、ドバイ、サウジアラビアの4軒をオープン予定です。

アジア、特に日本では、ウェルネスは調和とマインドフルな生活を融合させています。温泉入浴、森林浴、茶道、指圧などの伝統療法は、バランスと「今、ここ」に存在することを重視します。

東南アジアではアーユルヴェーダ、中国では伝統中医学が活用されています。対照的に、中東では、規模、ラグジュアリー、ハイテク革新を原動力に、グローバルなウェルネスハブとして台頭しています。

――注目すべき最新ウェルネストレンドとは?

グローバル・ウェルネス・インスティテュートは、ウェルネスツーリズム市場が2028年までに約9兆ドルに達すると予測しています。効率を追求する時代は終わり、自宅でも旅先でも、ウェルビーイングを意識したアプローチをとることが主流になりつつあります。

Z世代やミレニアル世代は、職場における燃え尽き症候群への危機感から、ウェルネスへの投資を加速しています。また、ベビーブーマー世代は、退職後のQOL向上のために投資しています。

主要トレンドとして、まず「スリープツーリズム」があります。シックスセンシズでも、客室はハンドメイドのナチュラルマットレス、オーガニック枕メニュー、睡眠トラッキングデバイスなど休息をサポートするよう設計しています。「職場のウェルネス」も注目されています。ウェルビーイングは経営トップ層でも重要視されるようになり、睡眠、マインドフルネス、定期的な運動を優先するリーダーは、より明確な判断力と高い感情知性を発揮する傾向があります。また、第一線で活躍するビジネスパーソンが直面するプレッシャーを特定し、対処するプログラムもあります。

「バイオハッキング」は2015年から提供しており、赤外線サウナ、クライオセラピー、点滴療法などで健康長寿をサポートしています。「サーマルセラピー」も普及し、ロンドンではマグネシウムプールを導入予定です。

「女性のウェルネス」では、ホルモンバランスやストレス耐性、食事栄養などへの理解を深めていただくことで、ご自身のウェルビーイングを守れるようサポートしています。

――これからのウェルネスビジネスの視点についてお聞かせください。

シックスセンシズは30年以上にわたりホリスティックな体験を形作ってきました。AIを含むテクノロジーがウェルネスに影響を与えていますが、データは人間の洞察を補完するツールとして活用しています。睡眠トラッキング、スマートウェアラブル、エピジェネティクスやDNA検査などの臨床的知見は、リカバリー、パフォーマンス、ストレスマネジメントの最適化に役立ちます。

しかし、テクノロジーはあくまで「ツール」であり、生活の「目的」ではないことを忘れてはなりません。日々データに縛られることで生じる不安の方が、よほど有害です。情報を得てライフスタイルを調整し、改善を確認したら、あとは人生を楽しみましょう。

長寿については「心豊かな長寿(longevity with soul)」という新しいパラダイムが生まれています。「どれだけ長く生きるか」ではなく「何のために生きるか」です。強い目的意識とスピリチュアルな関与が、より長く健康な人生につながることを研究が示しています。

私にとって真のウェルネスとは、完璧さを追い求めることではなく、調和を見つけることです。身体、心、精神が、周囲の環境や自分の目的と調和して動くとき、ウェルビーイングは自然とついてきます。シックスセンシズでは、これを「内側からのウェルネス」と表現しています。幸福を追い求めるのではなく、満ち足りた気持ちに根ざしたウェルネスです。

シンプルで気づきのある瞬間が、意味のある変化を生み出します。瞑想、自然の中で過ごす時間、誰かと分かち合う笑い、呼吸法――これらは馴染み深いものかもしれませんが、深い回復をサポートしてくれます。

コミュニティも同様に大切な役割を果たします。ライフスタイルがより流動的になるにつれ、本当のつながりを持つコミュニティへの必要性が高まっています。

今後は、まだ訪れたことのない場所や歴史、文化に触れ、古代の癒しと現代科学の融合をさらに探求して、一人ひとりのウェルビーイングと、コミュニティ全体のウェルビーイングの両方に貢献していけることに、大きな期待を抱いています。

Interview

マーク・サンズ(Mark Sands)氏

シックスセンシズ ウェルネス副部長
Vice President of Wellness at Six Senses

2011 年に入社後、ベトナム・タイでのエリア・スパディレクター等を経て、グループのウェルネス戦略、スパ開発、プロダクト/ リテールを主導。睡眠を含むパーソナライズドプログラムや従業員向けMission Wellness を推進し、ヒマラヤのAnandaで培った経験を背景に、科学的知見と伝統療法(アーユルヴェーダ等)を融合、自然と地域に根差すラグジュアリーを提唱している。

※文中の写真は、モルディブの「シックスセンシズ カヌフラ」

マーク・サンズ(Mark Sands)氏

シックスセンシズ ウェルネ / 副部長
Vice President of Wellness at Six Senses