大和ハウスグループの一員として、全国でフィットネス事業を展開するスポーツクラブNAS株式会社が、新たなピラティス事業を開始した。同社新規事業統括部・新規事業部部長の児玉晴美氏に、この新業態について訊いた。
クラブ内小規模スタジオで、続けやすいピラティスを提供
同社は2023年7月に「NAS PILATES」1号店を新御徒町に開設した。2025年2月には、より気軽にピラティスを始められる女性専用マシンピラティススタジオの新ブランド「NAS PILATES ON THE GO」(以下ON THE GO)を、同社の総合クラブ「NASリバーシティ21」(東京都中央区)と「NAS大崎」(東京都品川区)内に開業した。10月には「NAS西葛西」(東京都江戸川区)「NAS新川崎」(神奈川県川崎市)「NAS篠崎」(東京都江戸川区)内で新たに3店舗を出店し、計5店舗となった。
ON THE GOの最大の特徴は、既存のスポーツクラブ内に展開する店舗形態である。
1つのプログラムが30分で完結し、価格は月3回で税込6,050円からと手頃だ。従来のNAS PILATESが45分のグループレッスンであったのに対し、ON THE GOは30分という短時間にエッセンスを詰め込んだプログラムになっている。1店舗あたりのマシン台数は基本6台。児玉氏は「インストラクターがある程度しっかりお客様を見られるように、省スペースで台数を抑えることで、しっかりカバーできる」と説明している。
ON THE GOでは、現在7つのオリジナルプログラムを展開している。会員満足度アンケートを3か月ごとに実施し、要望を反映してプログラムを追加している。会員は初心者が8割以上。現在の会員層は30代40代の女性が中心だが、スポーツクラブの中にあることで、50代以上にも利用が広がっており、幅広い年齢層を獲得できている。
“特別”から“日常”へ。ピラティスの新しい入口
児玉氏は、ON THE GOの企画について次のように語っている。「最近よく耳にするタイパやコスパといったところには、非常にマッチしていると考えています。ピラティスは敷居が高いと思われている方も多く、もっと気軽にこの素晴らしいエクササイズを始めやすく、続けやすいものとして提供したかった」
児玉氏は、この「始めやすくて続けやすい」というコンセプトを基に、このブランドを開発したと説明している。コロナ禍で変わった価値観を読み取った点も事業成功の要因だ。児玉氏は「人々は”鍛える”より”整える”を求めるようになった」と説明する。ピラティスの効果としては「体の内側から整う」「呼吸と動作を連動させるリラックス効果」「正しい姿勢を体に覚えさせる」ことが挙げられ、特に姿勢改善の実感を訴える会員が多い。重い負荷をかけないため年齢を問わず取り組めることも特徴だ。
「特別なピラティスを日常の中へ落とし込んでいきたい」と語る児玉氏。新御徒町店でデータを取った際、「他店でピラティスとはどのようなプログラムなのかよくわからないうちに終わってしまった」という声を多く聞いた。一人ひとりに適切な指導を届けられる人数として、6名が最適であり、30分という短時間で最大限の効果を出すためには、この規模がベストだと児玉氏は考えている。初心者がほとんどという前提のもと、ベーシッククラスは完全初心者向けに設計されており、マシンの乗り降りから呼吸の仕方まで基礎から丁寧に指導している。
児玉氏は、フィットネスからウェルビーイング領域への流れがピラティスに体現されていると考えている。児玉氏は言う。「鍛えるより整える、コンディショニングというように皆さんの意識が向いてきた中で、ピラティスは最適なプログラムだと思いますね」ON THE GOが目指すのは、ピラティスを「特別なものから日常のもの」へと変えていくことだ。このブランド名には「すぐに始められる」というイメージが込められており、グローバルな響きを持たせている。スポーツクラブとピラティススタジオの融合は、相互にメリットも生んでいる。ピラティスプログラムは、既存会員の新たなニーズを捉えており、店舗によっては、ピラティス会員の40%以上がスポーツクラブNASの既存会員というケースもあり、クラブの新たな収益の柱として成長している。
「整う」を未来へON THE GOが確立する新時代のライフスタイル
今期以降も出店予定で、最終的には30店舗以上の全国展開を目指している。まずは関東圏の都内と神奈川を中心に出店し、続いて関西エリアへ展開していく予定だと児玉氏は言う。
10月にオープンした新店舗3店では新たな試みを開始した。ピラティス会員が館内のスパとサウナを利用できるというものだ。「ピラティスで整って、スパやサウナでも整ってほしい」というのが児玉氏の願いである。運動で整い、サウナやスパでさらに整うことは、心身ともに良い効果がある。これは、スポーツクラブ内で展開するからこその付加価値であり、通常のピラティススタジオでは提供できない独自の強みとなっている。
既存店舗内への出店であれば、フロントスタッフなどの人員配置がスポーツクラブにあるため、スピード感を持って出店できる。また、館内の空スペースを活用できること、既存施設を活かして投資を抑えられることも大きなメリットだ。「もっと出店スピードを上げていきたい」と児玉氏は語る。新川崎店は元々和室だったスペースを改装している。畳敷きで掘りごたつがあった空間が、今ではモノトーンと木目を基調としたシンプルなスタジオに生まれ変わった。壁も張り替えず、床と掲示板などを整えただけで、投資を抑えながらおしゃれな空間を実現している。間接照明を採用し、仰向けの姿勢などでもまぶしくないように配慮するなど、細部にもこだわりが見られる。
プログラムの開発も継続する。アウターマッスルを鍛えるアクティブ系と、柔軟性とリラックス効果を高めるストレッチ系など、今後は半年に2本のペースで増やし、最終的に20種類の導入を目指す。
さらに、プログラムの枠を超えた取り組みも強化される。女性向けのリセット合宿などマインドフルネスを取り入れたイベントが計画されており、これにはグループ会社のホテル事業とも連携し、「整う」をテーマにした機会を提供していく。
加えて、管理栄養士による無料セミナーの開催も検討するなど、会員により充実した時間を届けるべく、取り組みを広げていく方針だ。
ON THE GOは、世界にも目を向けている。海外での出店も計画中で、児玉氏によると「もう動き始めている」そうだ。来年にはいい報告ができるのではないかと明かしてくれた。児玉氏の言葉を借りれば、「色々な場所にNAS PILATE SON THE GOがあって、好きなときにどこに行っても使える」という理想に向かって、着実に歩みを進めている。ON THE GOは、現代人のライフスタイルに寄り添いながら、「整える」文化を日本に根付かせようとしている。