カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社(以下、CCC)のグループ会社、カルチュア・エクスペリエンス株式会社(以下「CX社」)は、TSUTAYAをはじめとした˝地域に交流を生む新しい時代の体験型書店”の展開を中心に、新しいライフスタイルの提案、価値空間を生む事業の創出・拡大を行っている。CX社が現在、注力し出店を加速している事業が、これまで類を見ない独自のスタイルによるウェルネス施設で、ブックラウンジ・マシンジム・ヨガ・ピラティススタジオ等を組み合わせた「TSUTAYA Conditioning」、ミニブックラウンジとピラティスに特化したサテライト店「TSUTAYA Conditioning PILATES 」だ。マシンジムがあると「鍛える」イメージが浮かぶなか、これを払拭し、ココロとカラダを「整える」ことを主眼に置いている施設であることが大きな特徴だ。
現在、FC店舗も含め、全国各地に30店舗を展開中である。10月1日に開業した最新旗艦店「TSUTAYA Conditioning U_PLACE川越店」を見ながら、「TSUTAYA Conditioning」事業責任者である、カルチュア・エクスペリエンス株式会社で商品本部ウエルネス部部長の松本敦氏の取材をもとに事業を研究したい。
「TSUTAYA Conditioning」の特徴と「整える」の提供
CCCは、1985年の創業時に「世界一の企画会社」をビジョンに掲げて以来、多くの新しいライフスタイルを生み出してきている。なかでも「TSUTAYA」は、本やメディアの時代変化に対応し変革を続け、2011年に誕生した「蔦屋書店」は、行くこと自体が発見にあふれた店舗空間と滞在の価値が創造されており、現在でも主要な都市空間内で展開されている。
CCCの企画力で、ウェルネス体験も変革していこうと想いのもと、「TSUTAYA Conditioning」は2017年に東京都世田谷区桜新町に1店舗目を出店。フィットネス業界が通例とする参加率3~4%を奪い合う事業ではなく、健康に少しでも関心のある方に参加してもらえるサードプレイスであることを目指すものだ。これまでのフィットネス施設に参加していなかった層や、運動で身体を鍛えることが苦手な層を対象に、「整える」ことを主眼とした店舗となった。

整えることを、まず鮮明に表しているのがブックラウンジだ。TSUTAYAらしく本に囲まれた居心地のよいブックラウンジになっており、本は運動・美・食・暮らしをテーマに『代官山蔦屋書店』のコンシェルジュが選書した本が並べられている。いずれの店舗も入口を入ると本に囲まれたラウンジが広がっており、これまでのフィットネス施設との違いが一目瞭然だ。ラウンジの席はゆったりと、テーブルにはコンセントやネット環境が無料で整備され、もちろんドリンクも用意されている。
会員は運動をしなくても、ラウンジで思い思いの過ごし方ができることは最大の特徴だ。
バリエーションとして、グループレッスンを基本とするマシンピラティススタジオは「楽々ピラティス」をテーマに打ち出している。マシンジムエリアには全自動AIサーキットマシン「EGYM」(国内取扱代理店・ジョンソンヘルステックジャパン株式会社)が置かれている。ドイツで開発されたEGYMは、スマートトレーニング機器とデジタルプラットフォームを組み合わせたAIマシンで、初期測定後は個々人にあった重りや運動回数を自動で設定。都度の設定の煩わしさがない15分完結のサーキットマシンでモニター上で示されるガイドを見ながらゲーム感覚で自然と運動ができるので初心者でも気楽に参加できる。

また運動前後には「整えチェア」と名付けられたストレッチチェアでゆったり過ごすことができる。店舗内には、ランニングマシンやフリーウェイト等の重量設定をする機器は一切置いておらず、非常に静かで、フィットネス施設で気後れしてきた運動苦手層や初心者層には居心地のよい空間になっている。
なお、「TSUTAYA Conditioning PILATES」は、ニーズの高いマシンピラティススタジオの総称であるが、都心部を中心にピラティススタジオのみを切り出し、サテライト店として展開を進めている。現在23店舗になっているが、サテライト店でも基本理念は一緒で、10台以下のリフォーマーによる少人数制グループレッスンと、ミニブックラウンジを備えている。
「TSUTAYA Conditioning U_PLACE川越店」

2025年10月期には4店舗【「TSUTAYA Conditioning U_PLACE川越店」(埼玉県川越市、10月1日グランドオープン)、「TSUTAYA Conditioning PILATES高松サンシャイン通り店」(香川県高松市、10月1日グランドオープン)、「TSUTAYA Conditioning PILATES湘南T-SITE店」(神奈川県藤沢市、10月1日グランドオープン)、「PINOS PILATES produced by TSUTAYA Conditioning」(京都府向日市、10月2日グランドオープン)を開業しているが、なかでも最大規模となる約150坪の規模で展開されている「TSUTAYA Conditioning U_PLACE川越店」について詳しく見ていきたい。
これまでの出店では、既存するTSUTAYAのリニューアル出店が多かった。現在全国各地に約750あるTSUTAYA(書店)の多くはFC店舗で、売り場改革が求められたり、デベロッパー側から増床提案などがあったりすることが多く、その中で「TSUTAYA Conditioning」を出店することが多かった。ウェルネスな空間の提供は不動産収益面からも明らかに注目されていることが伺える。CX社では、こうした時代要請を受けて、店舗ごとの市場特性を分析しながら、スペース転換が可能な店舗に「TSUTAYA Conditioning」を出店してきている。
しかし、「TSUTAYA Conditioning U_PLACE川越店」では、これまでとは異なり、デベロッパーサイドが新たにFC加盟して出店した店舗であることが特筆できる。
入居するビル「U_PLACE」は、JR・東武東上線川越駅西口から徒歩2分、ペデストリアンデッキで直結する好立地に位置する。同ビルは、埼玉県を中心に「ウニクス」の施設名で地域密着型商業施設を展開する株式会社ピーアンドディコンサルティング(本社:埼玉県さいたま市)が、川越市所有地の提案コンペで当選し、事業用定期借地権設定契約により50年間賃借し開発・経営する複合ビルで、「優しい場所」「遊び心あふれる場所」「人と人を結ぶ場所」「ゆったりとした(悠)時が過ごせる場所」「UNICUSの意味である唯一無二の場所」をテーマに、2020年6月に開業した。
「TSUTAYA Conditioning」が入居する前には、同区画にて24時間営業型のフィットネスジムを業務委託により運営していたが、TSUTAYAのブランド力と、女性専用マシンピラティスを中心とした“コンディショニング”という独自のコンセプトに魅力を感じ、自ら「TSUTAYA Conditioning」のFCに新規加盟し事業参画を決定、10月1日に開業するに至っている。
株式会社ピーアンドディコンサルティングが経営する商業施設「ウニクス伊奈」「ウニクス南古谷」にTSUTAYA(書店)がテナント出店するなどの接点はあるが、TSUTAYAグループへのFC加入は全く初めてのことだという。
デベロッパー目線でも、事業の優位性も高く評価し事業参集を判断したことが伺える。なお運営については、CX社に運営委託する方式を採用、今後も「ウニクス」への出店をはじめ、多店舗化の検討を進めていく。
施設は、同ビル7階の約150坪に展開されており、ブックラウンジ、マシンピラティススタジオ、ジムエリア、パウダールームが基本のラインナップ。会員料金は、ジム会員8,800円(税込)、ピラティス4会員(月4回ピラティスレッスン+ジム)13,200円(税込)を主軸としいて、ブックラウンジはどの会員でも無料で使える。整えるコンセプトを体現するために、ジム内が過密にならないよう、初期には会員数を400人を定員とした段階的な募集方法にしたが、オープン時には定員を超える反響があり、順調に会員数を伸ばしている。入会者の年齢コア層は40~50歳代だが、幅広く平均して入会しており、男性の入会も可能なことからピラティスをやってみたいという男性も入会している。(※現在ピラティスは女性専用)
利用者はその日の気分に合わせて、思い思いの過ごし方をしているとのことで、取材訪問の際に滞在していた会員に訊くと、「朝からラウンジで、国家試験に向けた勉強をしている」という学生がいた。フィットネス経験者からは「24時間ジムの利用経験はあるが続かなかった。AIマシンは設定もやってくれるのでとても楽」「ピラティスも10人ぐらいの程よい人数でレッスンができ参加しやすい」、全くのフィットネス初心者である会員は「初めての入会で心配したが、他の会員さんが好きなように過ごしているのを見て、自分もそのように過ごせばいいとわかり、楽しく過ごしている」という声を訊くことができた。こうした利用者の生の声を聞くと、“ココロとカラダを整えるサードプレイス”という狙いが会員にも通じて、理解されていることが伺える。
CX社では、「TSUTAYA Conditioning」のブランド認知を強固なものとするために、スピードを持って展開する戦略のもと、25~40坪程度で展開する「TSUTAYA Conditioning PILATES」、150~200坪強のスペースには「TSUTAYA Conditioning」を展開し、2027年までに計200店の出店を目指す。
入会者にはCCCMKホールディングスが運営するVポイント(利用者数1.54億人※有効ID数)が、施設利用・会費に応じてポイント付与されるという。これは会員にとって大きなメリットになる。
またオーナーには、急速な店舗展開で、ピラティスのインストラクター確保ができるのかという人材面の心配はあるが、「人材の課題を解決したいという想いから、インストラクターを支援するCCC独自の仕組みとして『ウエルネスデータバンク』を有している。これはインストラクターの派遣、育成、品質管理のほか、レッスンの代行管理、オリジナルプログラム提供などを行う仕組みで、現在全国各地から約3,000人の方が登録している。「CCCはインストラクターの社会的地位を高めると共に、インストラクター価値を高め、よいレッスンを提供し、会員に喜んでもらう好循環をつくる。そのサポートをしようというのがデータバンクの狙い。個人事業主であるインストラクターの仕事環境を整えることに繋がっており社会貢献もできる事業」(松本氏)。人材の確保も怠りない。
ウェルネス体験の価値や文化を変えていくという、CCC、およびCX社のテーマはその
実現に向けて確実に動きだしている。