「BEB by星野リゾート」(以下、BEB)は、星野リゾートの「星のや」「リゾナーレ」「界」「OMO」に続く5つ目のブランドだ。「居酒屋以上 旅未満 みんなで ルーズに過ごすホテル」をコンセプトに、“普段の飲み会よりも素敵に、旅よりも気軽に”、過ごすことができるホテルとして、新たなスタイルを提案している。ブランドとしては、「BEB5軽井沢」が2019年2月に第1号施設として開業、2026年7月開業予定の「BEB5門司港」を含め4施設となる(図表1)。BEBは、星野リゾートの近未来の宿泊顧客になっていく若者層をターゲットにしながら、地域を自由に楽しめる。その考え方と、サービス内容について、「BEB5軽井沢」を中心に紹介したい。
『Wellness Business』通巻3号(2026年5月25日発行)連載「星野リゾートのサブブランド戦略とウェルネスプログラム研究」記事を転載
【図表1】BEBブランドの4施設の概要
BEB5 軽井沢 by 星野リゾート
| 所在地 | 長野県軽井沢町 |
|---|---|
| 開業日/客室数 | 2019年2月5日/73室 |
| 施設コンセプト | 「居酒屋以上 旅未満 みんなでルーズに過ごすホテル」を体現するBEBブランド1号店。軽井沢の自然や星野エリアを気軽に楽しめる滞在を提案。 |
| 現在の主なイベント・アクティビティ | 夏限定「BEBパジャ旅ラン」を開催。パジャマ感覚のウェアで軽井沢の森をランニングし、トウモロコシスムージーや温泉、二度寝まで楽しめる“タイパ朝活”企画。雨の日は「ミスト・ウォーク」も実施。春は「BEBフラワーテラス」、秋には“きのこイベント”企画など季節イベントも展開。 |
BEB5 土浦 by 星野リゾート
| 所在地 | 茨城県土浦市 |
|---|---|
| 開業日/客室数 | 2020年10月22日/90室 |
| 施設コンセプト | 日本最大級のサイクリングリゾート「PLAYatré TSUCHIURA」内に立地。「ハマる輪泊」をテーマに、サイクリングを軸にした自由な滞在を提案。 |
| 現在の主なイベント・アクティビティ | 春限定で「お花見水上サイクリング」を開催。水上自転車で桜並木を巡る体験型アクティビティを展開。霞ヶ浦エリアの自然や地域性を体感できるサイクリング企画が特徴。また最新では「国営ひたち海浜公園」と連携し、プロジェクションマッピングでネモフィラを鑑賞できるイベントを開催中。 |
BEB5 沖縄瀬良垣 by 星野リゾート
| 所在地 | 沖縄県国頭郡恩納村 |
|---|---|
| 開業日/客室数 | 2022年7月1日/105室 |
| 施設コンセプト | 沖縄県屈指のビーチリゾート恩納村に位置し、気軽にリゾート気分が味わえる。のんびり自由に過ごす「よんな~ ちゅライフ」を提案。 |
| 現在の主なイベント・アクティビティ | 夜まで営業しているプールやサウナを楽しんだり、24時間オープンのパブリックスペース「TAMARIBA(タマリバ)」でくつろいだり、自由に過ごせる。春には「うりずんハーバルステイ」、夏には「NEO泡盛 Summer Night」など、ホテル滞在の時間を楽しめる季節イベントも開催。全客室キッチン、洗濯乾燥機で長期滞在ニーズにも対応。 |
BEB5 門司港 by 星野リゾート
| 所在地 | 福岡県北九州市門司区 |
|---|---|
| 開業日/客室数 | 2026年7月24日開業予定/119室 |
| 施設コンセプト | 「トキメキ海峡ステイ」がコンセプト。関門海峡ビューの絶景と、レトロな港町文化を感じながら、仲間とルーズに過ごす新しい海峡ステイを提案。 |
| 現在の主なイベント・アクティビティ | 開業準備段階。館内には足水付き“TAMARIBA”、大浴場、海峡を行き交う船を望む空間を整備予定。ブランドでは初のビュッフェダイニングも導入。今後は24時間自由に過ごせるTAMARIBAでのイベントや、港町文化を感じるアクティビティを展開予定。 |
若者の旅を支援するBEBブランドの面白さ
「BEB」は、星野リゾートが実施している、20~ 30代の旅の動向調査の声から生まれたブランドだ。調査では、「旅行計画を立てることが面倒」「旅行に居酒屋の気軽さで出かけたい」というような若者の意向が表れており、星野リゾートの「星のや」や「界」には、宿泊料金からも若者が宿泊するにはハードルが高く、旅の堅苦しさという負担が明確になっていた。
星野リゾートは、若者のこうした気持ちに危機感を持ってきた。いずれ「星のや」や「界」の顧客になっていく若い世代が旅を楽しめることを応援していかないと、いずれ温泉旅館に宿泊する人がいなくなる、ということを回避するため、また星野リゾートの認知を深めていくためにも、BEBは未来の顧客をつなぐ重要な役割として位置づけた。ルーズに過ごしてもらう旅の提案は図表2の通りだ。
【図表2】BEB流ルーズな滞在の提案
| ・ 24時間営業のカフェラウンジ「TAMARIBA」 ・ 飲食物の持ち込み自由 ・ チェックアウトはだいたい11時ごろ ・ スケジュールを決め込みすぎない ・ 仲間と自然に過ごせる空間設計 ・ 「 旅の面倒くささ」を減らした仕組み ・ 遊びゴコロのある客室秘密基地のような「ヤグラルーム」 ・地域を“自由に楽しめる”立地 ・“頑張らない”アクティビティ提案 ・「ありのまま」でいられる空気感 |
このような若者へのアプローチは、具体プランにも表れており、BEB5軽井沢では「29歳以下エコひいきプラン」として、通常価格よりも割り引かれた宿泊料金が提供されている。こうした若者支援はBEBに限らず、「界」でも、日本旅館の過ごし方を体験してもらおうと18歳~29歳限定の宿泊プラン「界タビ20s」を実施するなど、「若者旅プロジェクト」として星野リゾートの重点戦略の1つにもなっている。
軽井沢の自然を感じてもらいたいBEB5 軽井沢での過ごし方の提案
BEBの各施設の特徴は図表1 にて紹介しているので見ていただくとして、ここからは「BEB5 軽井沢」を中心に過ごし方の提案を見ていきたい。
BEBブランドを象徴する共有空間が「TAMARIBA(タマリバ)」である。BEB5 軽井沢では24時間利用できるラウンジ、ソファ、ボードゲーム、カフェなどがワンフロア全体に広がっている。中庭の焚き火スペースを囲むように木製のベンチが置かれ、宿泊者はそれぞれ想い想いの時間を過ごす。

BEB5 軽井沢総支配人の遠藤美里氏は、「BEBでは、特別なアクティビティを提供するよりも、仲間と普段話せないことを話せる場所にしたい。思わず心が開けるような空間にしたい」と、TAMARIBAの在り方を話す。あえてのルーズなルーズの定義を遠藤氏に聞くと「時間に追われない、何をするか決め込まない、と考えています。ルーズと言うとだらしないよいうような意味合いもあるが、そうではなく、ホテル側のルールを押し付けることなく、自由に過ごしてほしい。チェックアウトの時間も”だいたい11時ごろ“としているのがその表れです」と話す。
では軽井沢ではどのような運営の魅力を提供しているのか。「BEB5 軽井沢では、若い世代が、軽井沢を知るきっかけになればうれしい。軽井沢の豊な自然を感じてもらいたい」。
そこで5月からスタートさせたウェルネスプログラムが「究極にルーズな旅ランアクティビティ「BEB パジャ旅ラン」である。
「BEB パジャ旅ラン」は、2026年5月18日から8月31日までの間に体験できる企画で、パジャマでホテル周辺を走って、部屋に戻りそのまま二度寝で整うというランアクティビティだ。パジャマウェアは、大人気セレクトショップ「FREAK’S STORE(フリークス ストア)」のアイテムを採用。ファッション性も兼ね備えたウェアを着用し、距離やタイムにとらわれず、朝の時間を楽しむことを目的にしており、ランニングをしなくてもよく、運動初心者でも気軽に参加できるプログラムとなっている。

星野エリアは標高約1,000mの準高原に位置する環境。標高の高い場所では平地と比べて運動時の身体的負荷が大きくなり、短い距離でも身体を動かした実感を得やすい。美容やウェルネスな行動に意識の高い若者層に、日ごろの運動不足を解消する機会にもなると思われる。走った後には、とうもろこしを使ったスムージーが提供される。

この体験を通じて、軽井沢の季節感や自然を感じるとともに、星野エリアに広がる教会や軽井沢ホテルブレストンコート、星のや軽井沢や、星野温泉トンボの湯、ピッキオや軽井沢野鳥の森、ハルニレテラスなどを知る機会にもなり、目的とする若い層に、星野リゾートの認知を深めることにもつなげている。
“映える”の先にある軽井沢の自然と地域体験
BEB5 軽井沢では、季節ごとにユニークなイベントも展開している。
春は「BEB フラワーテラス」、秋は長野県の企業とコラボした“きのこのイベント” など、若者が思わず写真を撮りたくなる企画を打ち出している。その目的は単なる“映え”ではない。
「まずは“かわいい”“写真を撮りたい”という入口があって、その先で軽井沢の自然や文化に触れてもらえたらと思っています」(遠藤氏)
若い世代に向けた心を動かす企画として、推し活仲間と利用できる専用ルーム「推し活ルーム」を設置。好きな時間にその時の気分で、空間をアレンジして、仲間と楽しむことができるルームとなっている。
また、流行感度の高い若者層に人気の、韓国発のセルフフォトブース「Photomatic (フォトマティック)」も導入した。オリジナルフォトフレームは全5種類あり、仲間と思い出の1枚を撮影することができる。このフォトブースの特徴は、加工の機能はなく、“素の自分”を残すもので、撮影前の動きを収めた動画もダウンロードでき、その動画をSNSに公開することがブームになっている。日々変化する若者の価値観に、BEBも敏感に対応する。
「頑張って映えるより、自然体で過ごしたい。BEBの“ルーズさ”は、そういう今の感覚ともつながっている気がします」(遠藤氏)
若者の流行や価値観の変化は速いこともあり、「ブランドの完成形はまだ見えていない」と率直に話す。「界のような“ご当地楽”や、OMOのようなご近所マップのような明確な型が、BEBにはまだない。逆に固定化しないこと自体が、BEBらしさだと思っている」と遠藤氏は話す。
時代ごとに変わる若者の価値観に合わせながら、自由に形を変えていく。BEB5軽井沢は、そんな若者のマーケティングの場であり、価値観の変化を確認する場所になっていくのであろう。その意味で、BEBの他施設も若者に向けたユニークな展開をしており、7月開業の「BEB5門司港」も新機能の投入がある。また紹介していきたい。

DATA
BEB5軽井沢 by星野リゾート 施設概要
所在地:〒389-0111 長野県北佐久郡軽井沢町長倉3364-15
客室数:73室
チェックイン:15:00 /チェックアウト:11:00ごろ
料金:1泊 9,000円~(2名1室利用時1 名あたり、税込、食事別)
施設概要:パブリックスペース「TAMARABA]、カフェ、焚火スペース